市民出資による太陽光発電所、運転開始

 福知山市の三段池公園体育館、武道館、学校給食センターの3ヶ所に、合計約350kWの太陽光発電システムが完成し、発電を開始しました。これは、一般家庭に設置される太陽光発電システムの約70世帯分にあたる規模です。

プロジェクトの3つの特徴

<特徴1> 防災機能が向上します

災害時の避難所に指定されている体育館・武道館には、蓄電池を併設。停電時にも体育館の多目的トイレや授乳室などの照明が点灯する他、ロビー等に配置した緑色のコンセントを使用可能です。また、これとは別に、太陽光発電システムの発電時に使用できる非常用コンセントも設置してあり、携帯電話の充電など、様々な用途に電気を使用できます。

さらに、武道館には、V2Bシステム(通常時は電気自動車の充電に、停電時には電気自動車の電気を建物に給電できるシステム)を導入。福知山市は、公用車に占める電気自動車等の割合を2040年を目途に100%とすることを目標と掲げており(福知山市の計画へのリンク)、停電時にはこの電気自動車を活用することで停電に対応することができます。

<特徴2> 市の初期投資ゼロで設置できる仕組みです

図:福知山市プレスリリース資料より

この太陽光発電所は「オンサイトPPA」と呼ばれる仕組みで設置しました(環境省によるオンサイトPPAの説明資料はこちら)。

太陽光発電システムや蓄電池を設置・所有するのは、たんたんエナジー発電合同会社(たんたんエナジーが100%出資する特別目的会社)です。福知山市は、「使った分だけ」の料金(通常の電気代とほぼ同等)を支払えばよく、設置の初期費用も、長期にわたるメンテナンス費(保険料・点検費用・パワーコンディショナの更新費用・償却資産税等)も支払う必要はありません。

なお、太陽光発電でまかないきれない電気は、たんたんエナジー株式会社が、実質再エネ100%の電気を供給しますので、これらの施設での電力使用によるCO2排出はゼロです。

<特徴3> みんなで作った発電所です

設置費用は、京都北都信用金庫様からの融資、及び、プラスソーシャルインベストメント様を通じた市民出資によって賄っています。地域の市民・事業者の方の大切なお金をお預かりし、再エネ・防災に投資し、得られた収入からお返ししていくことで、資金が地域で循環します。

市民出資は、募集開始からわずか3週間で募集枠に達し、52名の方から出資いただくことができました。(プラスソーシャルインベストメントの本プロジェクトに関するサイトはこちら)。

京都北都信用金庫様には、プロジェクトへの融資に加え、窓口からの市民出資への振込手数料を無料にしていただくなどの方法で出資をサポートいただきました。

 なお、このプロジェクトは、環境省「地域レジリエンス・脱炭素化を同時実現する避難施設等への自立・分散型エネルギー設備等導入推進事業」及び「トレージパリティの達成に向けた太陽光発電設備等の価格低減促進事業」の支援を受けています。

プロジェクト実施に至った経緯

<経緯1>福知山市再生可能エネルギー活用プラン

平成27年3月に取りまとめられた「福知山市再生可能エネルギー活用プラン」には、導入推進施策として「『市民協働型発電事業』による太陽光発電屋根貸し事業の導入」が盛り込まれました。

図:福知山市再生可能エネルギー活用プランより

プランにおいて、市民協働型屋根貸し事業の基本的な考え方は、下記のように整理されています。これを受けて、事業の具体化が検討されてきました。


  1. 太陽光発電の設置が困難な市民をはじめ、広く市民誰もが参加できる制度であること

  2. 地球温暖化対策の観点から再生可能エネルギーの中長期的な普及拡大に寄与するものであること

  3. エネルギーの地産地消を通じて、地域の活性化に寄与するものであること

  4. 防災に対する市民ニーズに応えるため、災害時の非常用電源として活用するものであること


<経緯2>福知山市における再生可能エネルギー事業の推進に関する提言書

上記のプランを具体化すべく平成30年3月に取りまとめられた「福知山市における再生可能エネルギー事業の推進に関する提言書」には、「収奪型」ではなく「地域循環型」の事業が重要であること、市の率先実行が不可欠であること、協働による事業推進が必要であることなどが示されています。

なお、同提言書には、「福知山市は(中略)地域新電力会社の設立・活用について、積極的に検討する」、「将来的に福知山市が小売電気事業に参入(参画)することを、本事業の前提とすべき」、「地産地消の仕組み(新電力会社の設立や、市内で循環サイクルを作れる電力会社との連携など)を検討する必要がある」といった文言が盛り込まれており、これが、下の協定につながっています。

<経緯3>地域貢献型再生可能エネルギー事業の推進に関する協定

上記の検討を受け、取りまとめを担った研究者らの参画によって立ち上げたのが、たんたんエナジー株式会社です。平成31年1月23日には、福知山市・京都北都信用金庫・たんたんエナジー株式会社・プラスソーシャルインベストメント株式会社・龍谷大学地域公共人材・政策開発リサーチセンターの5者が「地域貢献型再生可能エネルギー事業の推進に関する協定」を締結しました。

地域金融機関や、市民出資を扱うことのできる第二種金融商品取引業の資格を持った事業者が参画していることが特徴です。これによりプランに盛り込まれた市民出資型の発電所づくりを行う体制が整いました。本プロジェクトは、この協定に基づいて実施しています。

このように、本プロジェクトは、福知山市におけるエネルギー政策議論の積み重ねによって生み出されたものです。
【参考】福知山市域における再生可能エネルギーの地産地消の推進について(福知山市のサイトへのリンク)

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